【2nd Kitchen コラム】

水は栄養素に分類されていませんが、体を構成する成分の中で最も多い割合を占めており、酸素とともに生命維持のために不可欠です。血液をはじめ、皮膚や筋肉、臓器、骨などあらゆる部分に分布しています。今回はその水についてです。

水 water

前述したように、我々の生体を構成している成分で、最も大きな割合を占めているのは水です。乳児で体の80%、成人男性65%、成人女性55%、高齢者が50%となっていますが、その割合は個人差が大きいとされています。例えば、脂肪組織は水分が少ないため、体脂肪量の多い人では水の比率が小さくなります。女子が、男子に比べて水の比率が小さいのは、脂肪量の差によるものです。また、老化によって細胞数が減少するため、細胞内に含まれている水の分だけ体内水分が減少します。

水の働き

生体内では、水はさまざまな物質を溶かして、細胞内および細胞外に存在しています。なお、体内に存在している水溶液を総称して体液と呼びます。水分子の構造より、水は体内で多くの役割を果たしており、その水の働きは、次の5つです。

①多くの物質溶かす溶媒となる

②種々の化学反応を円滑に行わせる

③血液の80%を占め、栄養素や代謝物を輸送する

④電解質のバランスを維持して浸透圧の平衡を保ち、細胞の形態を維持する

⑤発汗作用により体温を調節する

体内での水分出納

体重の約1%の水分が失われると、のどが渇き、水分を補う仕組みが働きます。また、極度の発汗、下痢、嘔吐、出血などで水分が多量に失われると、頭痛や食欲不振、脱力感などの脱水症状が起こります。水分が体重の10%ほど失われると、筋肉のけいれんや意識の混乱を起こし、腎機能が失われ、20%以上では生命に関わってきます。

水の摂取は、飲料水からがもっとも多く、また水は食物にも含まれているので食物の摂取と同時に水の摂取も行われていることになります。さらに、体内で、糖質、たんぱく質、脂質などの栄養素が分解されるときにも水は生じています(下表 左側参照)。

他方、排泄では尿として排出される水がもっとも多く、その中には水を全く摂取しなくても排泄される尿、というものもあります。これは、代謝によって生じた老廃物やミネラルバランスを保つために不要な物質を排泄しなければならないからです。さらに糞便中に含まれる水としての排泄。皮膚や肺から人が意識しないうちに絶えず蒸発して失われている水も存在します(下表 右側参照)。

<健康なヒトの1日あたりの水分の摂取と排泄>

摂取量 排出量
飲料水 1,200~1,300ml 尿 1,200~1,500ml
食物中の水 1000ml 100~200ml
代謝水 200~300ml 皮膚・肺からの蒸発 800~1,000ml
合計               2,500ml 合計                  2,500ml

水分の欠乏と過剰

◆水分の欠乏

水分の欠乏は、多量に失ったり、水の摂取が不適切であると生じる現象です。水分の欠乏は、多量の出血、消化管や腎臓からの異常な喪失、水分補給量の減少、ホルモン分泌の低下などによってもたらされます。水分の欠乏がひどくなると、頭痛や食欲不振などを招き、血液濃度が上昇します。続いて全身の脱力感が起こります。さらに水分量の喪失が体重の数%に達すると、精神不安定、体温上昇が認められ、10%になれば、筋肉の痙攣が起こり、意識が混乱し、腎機能が失われます。そして、体重の20%の水分が喪失すると、生死をさまようと言われています。また、運動時には体温が上昇するため、発汗によって熱が放出されるため、水分が喪失します。水分の喪失は、血液の濃縮や脱水症を引き起こし、筋力を低下させ、反射運動を鈍くさせます。よって、高度な運動時には適度の水分を補給しなければなりません。また、発汗時の留意点として、ナトリウムイオンやカリウムイオンといった電解質の喪失を伴うことが挙げられます。

◆水分の過剰

過剰な水分によって起こる典型的な臨床例としては水中毒があります。水中毒では、過剰な水分を利尿によって減少させようとするため、水分の喪失とともに塩類の欠乏が生じます。症状としては、唾液分泌の過多、嘔吐、衰弱、運動失調が見られるようになります。また、腎臓に障害が生じることによっても過剰は起こり、それは腎臓での水分の再吸収が増加したり、水分排泄量が減少することによるものです。生体内で水が過剰に存在すると、水の細胞内への移動を引き起こし、これが脳細胞で起こると脳圧が上昇し、意識障害や痙攣を招きます。また、水分の過剰状態になると体重増加、浮腫、心不全、高血圧などのが見られるようになり、利尿薬の投与や透析といった対応がなされます。

夏のみならず、これからの季節でも脱水症状は起こります。のどが渇く前に、定期的にこまめな水分補給が大切です。