【2nd Kitchen コラム】食物繊維

五大栄養素(糖質、たんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラル)は、消化吸収を受け、直接、生体内で利用されます。しかし、我々の体のなかでは、消化されることなく、何らかの機能を果たしている成分があります。それらが今回のテーマです。

食物繊維 dietary fiber

食物繊維は、ヒトの消化酵素で消化されない食品中の難消化性成分の総体」と定義されています。

食物繊維は、“難消化性多糖類”や、“ダイエタリーファイバー”とも称され、腸内環境を改善するなどとして知られています。なお、食物繊維は水に溶けない不溶性食物繊維と水に溶ける水溶性食物繊維とに分類されますが、ほとんどの植物性食品は両方の食物繊維を含んでいます。

食物繊維の過去

食物繊維は、長年、栄養学的に価値がないもの、食べ物のカスとしてとして評価されず、むしろ食べ過ぎると消化管に対して負担をかけるうえ、栄養素の消化吸収率までも低下させると考えられてきました。米や小麦粉中の食物繊維は食感を損なうために、食品加工の過程で排除され、その結果、加工食品はおいしくなり、栄養価も上がりましたが、その反面、大腸がん、消化器系の疾患や、糖尿病、肥満などの生活習慣病の罹患率が急増しました。これらの疾患と食物繊維との因果関係にバーキット氏はいち早く気付き、疫学的調査から高繊維食が大腸がんの発症が防ぐことができるという作業仮説を1971年に提唱しました。それ以降、食物繊維の栄養学的意義を探る研究が進み、最近では、腸内環境による分解・発酵を経て、さまざまな生理作用をもたらしたりと、次々と健康機能が明らかにされ、注目されています。

不溶性食物繊維

不溶性食物繊維は、腸の働きを刺激して、腸内に発生した有害物質の排出を促す作用があります。よって、便秘を予防したり、腸に関する病気を抑制する働きがあります。

不溶性食物繊維には、植物細胞壁に由来するセルロース、ヘミセルロース、リグニン、きのこ類の細胞壁や甲殻類のえび・かにに含まれるキチン、さらにはキチンを化学処理してできるキトサンなどがあります。

水溶性食物繊維

水溶性食物繊維は、コレステロールや糖質の腸内からの吸収を妨げ、血清コレステロールや血糖の上昇を抑える作用があり、脂質異常症や糖尿病の予防効果が期待されています。また、腸内細菌の発酵を受けやすく、乳酸菌などの有益菌を増やして腸内細菌の環境を改善してくれます。

水溶性食物繊維には、植物細胞の間隙に含まれるペクチン、植物ガム質のグァーガム、海藻に含まれるアルギン酸ナトリウムなどがあります。

食物繊維の過不足

食物繊維は、食品から摂る限り、過剰症の心配はありませんが、サプリメントなどで単一の食物繊維を多量に摂ると、下痢を起こすことがあります。また、食物繊維の摂り過ぎは、鉄やカルシウム、亜鉛などの吸収を妨げ、ミネラル不足に陥る心配が懸念されます。一方、食物繊維が不足すると、便秘になったりになる恐れがあります。さらに、腸内で作られた有害物質が長く留まることで腸内環境が悪化し、発がんのリスクが高まるとされています。

~食物繊維 意識して摂取しましょう~

食物繊維は意識して摂らないと不足しがちと言われています。なお、食物繊維は、種類によって健康機能が異なるので、多種類の食品を組み合わせて摂るのがコツです。

まず、野菜に食物繊維が多いですが、どのように摂取するかがポイントとなります。生野菜サラダばかりではカサが多く、量がなかなか摂れません。よって、煮物やお浸しなど、火を通した方が、カサが減ってたっぷり食べられるため、加熱してカサを減らして食する方法がおすすめです。食物繊維は、野菜のほか、豆類、海藻、乾物、いも類などにも豊富なので、これらを使った、おばんざいを食卓に用意してみましょう。また、主食のごはんは押し麦や玄米入りに、パンは、全粒パンやライ麦パンなどにすると、食物繊維を効果的に増やすことができます。

食物繊維の1日の目標量は、成人(1869歳)男性で20g以上、成人女性で18g以上です